研究活動

2023年10月19日(木)4年 国語 「登場人物の気持ちの変化のきっかけを見つけよう」

単元構想について

 本実践では、児童が主体的に学習に取り組むための手立てとして以下の2つを行った。

①視点人物の転換

 本教材では,のぶよを中心に弟のけんじとお母ちゃんの三人家族の物語が展開していく。場面は運動会、年齢は四年生であるため,児童はのぶよに同化しながらのぶよの気持ちの変化を読み取っていくことができる。第二次までは,のぶよの気持ちを中心に読み取っていき,家族三人の関係性やのぶよの気持ちを変えたきっかけが弟のけんじであることを前時までに学習していった。本時では,のぶよの気持ちを変えたけんじも気持ちが変化していることを捉え,けんじの視点で読み進めていくように促す。そうすることで,本文の中に描かれていない場面があることに気付くことができる。その場面でけんじが行った行動により,それまでけんかをして仲を悪くしていた母と弟が仲直りをしている。のぶよはその二人の応援があったからこそ,憂鬱だった徒競走が誇らしく感じられるようになっている。違う視点で読み返すことで,これまでの学習とのズレを実感することができ,内発的学習意欲を触発することで,感情的エンゲージメントを表出するねらいとした。

②挿絵の提示の工夫

 本実践に当たり,教材から挿絵を省いた状態で配布した。挿絵があることで登場人物の気持ちを読み取る際に,本文読解の補助や多義的な読みに気付くことができ,納得のいく読みをすることができる。その挿絵を省くことで本文に注目する必要が生まれたり,挿絵に対する関心が高まり,挿絵から登場人物の気持ちさらに理解することができる。そうすることで,叙述のみで考えていたものと比べていたときに,その表情の違いに気付くことができ,もう一度教材を読み直し,人物の気持ちについて具体的に想像できるようにした。本時の導入では,2枚の挿絵を提示し,けんじの表情が変化していることに気付く。そこからけんじの気持ちが変化したきっかけはどこにあるかについて自然と意識を向けることができる。そして,きっかけを捉えると,そこから変化後までの間に描かれていない場面があることに気付く。挿絵を提示の工夫をすることで,挿絵の価値を認識することができ、それを通して,けんじの気持ちを考えていくという目標を意識しながら、学習を進めることができることをねらいとする。

 

本時の様子について

 導入では,お弁当を食べている3人の様子が描かれている挿絵と徒競走が終わった後の3人の挿絵を提示し,それぞれのけんじの表情が変化していることに着目させることで,対人物であるけんじの気持ちが変化していることに気付かせた。中心人物の気持ちの変化を学習してきた児童は,「けんじの気持ちが変わっている。」と中心人物以外の人物の気持ちが変化していることに驚いている様子であった。そこで,けんじの視点で「走れ」を読み直そうという課題を提示することで,児童は目標を明確にもって取り組むことができていた。

 次に,お昼ご飯から徒競走までのけんじの気持ちが表れている行動を時系列に捉えることで,けんじの行動描写がないことに気づき,描かれていない部分のけんじの行動を読む必然性が生まれる。児童は,もう一度本文を読み直し,けんじとお母ちゃんのやりとりを,本文に書かれているけんじとお母ちゃんの表現から想像していた。児童は,描かれていない場面の直前にある水飲み場のけんじとのぶよのやりとりに注目し,「わりばしに書かれた文字をにらんでいたから,けんじはお母ちゃんに謝りに行かないといけないと思うようになっていたと思う。」と描かれていないけんじの気持ちを考える材料になるような発言をしていた。

 そして,けんじの視点で読み直すことでのぶよの違った捉えに気付くことのおもしろさを実感した児童は,これまでの学習してきた教材ではどうなのかという関心を示すようになった。そこで,これまでの教材の中で対人物の気持ちが変化している教材を探し,その人物の視点で読み直してみるという新たな課題を提示した。児童は,これまでの教材を振り返り,どの教材だったらありそうか友達と語る姿がたくさん見られた。第三次では,別視点で読み直したお話で紙芝居を作ろうという課題に取り組んだ。本文や挿絵など別視点にすることで変更する必要が生まれ,「モチモチの木」をじさま視点で読み直し,口調をじさまの口調に変えたりじさまから見た豆太の姿を描いたりしていた。

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