研究活動

2023年11月16日(木) 1年 国語「すきなところを みつけよう(「たぬきの糸車」光村図書1年下)」

 民話の中でも昔話に分類される本教材は,おかみさんの糸車を回す様子に興味をもったいたずらたぬきが,冬の間に山奥の一軒家へ入り,糸の束を山のように紡いで帰って行く,という話です。たぬきの様子を見るおかみさんの表情に着目し,友達の意見を受け取ったり教科書を読み返したりしながら,おかみさんの気持ちの移り変わりを想像する活動を取り入れました。これは,教科書には直接描かれていない部分を想像することで,物語を豊かに読む力を育むことをねらっています。

 そのために次のような手立てを行い,児童の「内発的な学習意欲」を触発するようにしました。

① おかみさんカード

 おかみさんカードは,喜怒哀楽・不思議など,様々なおかみさんの表情を描いたものです。同じ表情でも,一人ひとりの読み方は違うため,どのような感情がそこに込められているか,捉え方にズレが生じます。おかみさんのたぬきに対する思いを言語化させて擦り合わせることで,集団で読むことのよさを感じることができるようにしました。

② 動作化

 動作化は,登場人物の行動について,描かれている言葉から確かめたり,描かれていない動きを演じたりする際によく用いられます。しかし,本実践では,一文の叙述がもつ「時間的な長さ」を実感するための手立てとして取り入れました。おかみさんがたぬきを見ている,または,たぬきと関わっているところは,それぞれ一瞬の出来事ではなく,ある程度の「時間」が存在していることに気付かせることで,友達の意見を受け取ったり教科書を読み返したりしながら,おかみさんの気持ちの重なりや移り変わりを想像することができるようにしました。

 

〈本実践を通して〉

 第2次では,たぬきの様子を見るおかみさんの表情に着目し,おかみさんの気持ちの移り変わりを想像する活動を主に行いました。その際,児童の内発的な学習意欲を触発し,教科書には直接描かれていない部分を想像することで,物語を自分なりに解釈する姿が見られました。場面の様子や登場人物の行動を基に,おかみさんの視点からたぬきを捉えながら読み進めていったことで,おかみさんとたぬきの温かな関わりによさを感じた児童が多くいました。

 そのため,第3次では,おかみさんとたぬきの関わりのうち,気に入っている場面を選んでかきました。絵に表す際は,挿絵に工夫を加えたり,叙述や考えたことから想像して描いたりしていました。また,次のように理由も書き表すようにしました。

・たぬきが破れ障子から覗いていてかわいいし,糸車を回す真似をしていて面白いから好きです。

・たぬきが罠にかかっている場面の,おかみさんの顔がいろいろ考えられるから好きです。

・たぬきはいたずらものだけじゃなくて,いいところもあると,おかみさんが分かったから好きです。

・ 戸を開けた時はたぬきが糸車を回していて驚いた。そのあと,上手な手つきで糸を紡いでいるから癒やされているから好きです。

・ たぬきは急いでいるけど,おかみさんの方は「どうしたんだろう」と思っていて面白いから好きです。

・おかみさんもたぬきが糸を紡いでくれて「ありがとう」と言おうとしていたかもしれないから好きです。

 

 今後も,叙述を読み返すよさを実感できる手立ての工夫に注力していきたいと考えています。それによって,友達の意見を受け取ったり自分の考えを形成し直したりする際,常に叙述へ立ち戻って思考・判断しながら読む力を育んでいきたいです。

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