研究活動

2023年9月7日(木)1年 教材名「はしのうえのおおかみ」

 本実践では,「主体的に学習に取り組む態度」を高めるために以下の手立てを考えました。

問いの設定

 「達成への学習意欲」を触発するために,「どうして,親切にするの?」という問いを設定しました。親切にしたり,親切にされたりというのは,児童が日常的に経験しているものと考えられます。従って,児童がそれぞれの生活体験を通して,出てくるであろう個々の意見を交流することで,「思いやり,親切」に対する理解が深められることをねらいました。このことにより,身近にいる人に対して「思いやり,親切」に関する大切さを理解している児童に,道徳的価値について深く理解していこうとする「認知的エンゲージメント」(目的・目標)を表出させることができると考えました。

中心発問・補助発問の設定

 本時の中心発問「おおかみは,くまの後ろ姿をいつまでも見送っていたとき,どんなことを考えていたと思いますか。」では,児童それぞれの考えを引き出し,根拠を問う補助発問をしていくことで,「思いやり,親切」について多面的に考えさせました。また,交流の中でおおかみの親切な行動を阻害したと考えられる条件に触れ,教材中の阻害条件を自分との関わりの中で考えることで,登場人物の行動に対して批判的に捉えるだけではなく,人間誰しもがもつ弱さについても考えさせる時間を設けました。

動作化・役割演技

 「内発的な学習意欲」を触発するために,動作化や役割演技を設定しました。

 動作化を取り入れることで,役になりきって表現する楽しさを感じさせるだけではなく,問題場面がイメージしやすくなります。展開・終末において,そのイメージが自分との関わりを考えていく上での手がかりとなります。また,意地悪をおもしろがり優越感に浸るおおかみの気持ちを共感的に捉えさせることで,教材の中に自分を投影することができ,教材に没入することができると考えました。

 役割演技では,演じた児童がどんな思いで表現したのかを問うことで,実感的に理解できるようにした。学級の児童にも演じた児童の思いを十分考えさせ,「思いやり,親切」に関する道徳的価値の理解につなげていけるようにしました。そうすることで,児童の道徳的価値に対する理解が深められることが期待できると考えました。このように,意図を持って動作化や役割演技を取り入れることが,「感情的エンゲージメント」(興味・関心)を表出させ,その後の活動において自分との関わりで考えながら理解を深めていこうとする「行動的エンゲージメント」(粘り強さ)へつながると考えました。

終末「ふりかえり」

 終末では,導入時の自分の考えと,終末での自分の考えを比べさせることで,児童それぞれの「思いやり,親切」に対する考えの自覚を促す時間を設けました。また,意地悪な姿と比較することで「思いやりの気持ちは大切だ。親切にすることは大切だ。」というような分かりきっている内容に留まらず,親切な行動が他者の喜びとなること,さらに自分自身の喜びとして受け入れることができるといった道徳的価値に気付かせることをねらいました。

 

【児童のノート】

・ともだちのいけんをきいて,しんせつにするとじぶんが「すごいな」とおもうし,おとなになったきもちがするんだとわかりました。

・さいしょは, しんせつにしたらあいてがうれしくなるとおもっていたけれど,あいてだけではなくて,じぶんもまわりのともだちもうれしくなるとわかりました。

・いつでも,やさしくできるんじゃないんだとわかりました。

 討議会では,自分との生活体験と結び付けられる導入,有効な発問や動作化・役割演技などについて議論となりました。今後も,道徳科では児童が分かりきっている内容を考えるのではなく ,自分との関わりの中で道徳的諸価値について理解を深められる授業展開や発問を追究していきたいと思います。

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