研究活動

2020年12月2日(水)理科5年「振り子運動」

 本時では,理科として「振り子の運動」について学習したことをもとに,発展学習として,「あべのハルカス」の「振り子」を活用した制震構造について調べました。「あべのハルカス」は,大阪市阿倍野区にある日本一の高さをほこる超高層ビルです。

 「教科横断的な視点」として,「振り子運動の美しさ」に触れるとともに,防災など「実社会での活用」という視点を取り入れて,本時のプランを立てました。

 授業の前半では,振り子のおもちゃを複数紹介しました。その1つ「ペンデュラムウェーブ」は,振り子の長さを工夫,調整することで美しい動きをするおもちゃです。

 また,振り子式特急は,カーブを通過する時に,振り子の力で車体を傾けることで,通過速度の向上と乗り心地の改善を図ったもので,乗客自身が「おもり」となります。

 授業の後半部では,高層ビル「あべのハルカス」を取りあげ,どのように振り子は活用されているのか考えました。「あべのハルカス」に見立てた,「長さ25cm,1往復する時間1秒」の振り子に,新たにもうひとつ振り子を加える際,どのような「振れ幅」,「重さ」,「長さ」にすれば,揺れを抑えることができるのか,調べました。

 「重い振り子を下に付ける」という考えも出ましたが,振り子が1往復する時間は,「重さ」ではなく,「長さ」が関係するという知識を活用し,「長さが同じやったら,つり合うかと思った。1つは右に動いて,1つは左に動いて,それでつり合う」という考えも出ました。

 授業の終末部で,実際のあべのハルカスでは,強風の際の揺れが「1往復する時間」を計算で求め,それと同じ揺れの振り子を56階の機械室に設置していることを説明しました。そして,関西空港が大きな被害を受けた平成30年台風第21号が襲来した時には,ハルカスの振り子ATMDが動作したことも話しました。

 授業後の討議会では,STEAMを意識したからこそ生まれた実践である,振り子について子どもが興味深く考えていたという肯定意見とともに,授業前半部で振り子の長さ(数値)に着目させ,もっと強調しておけば,「振り子が1往復する時間は,振り子の長さによって変わる」ことから高層ビルの制震構造についてもっと考えを深め,問題解決することができたのではないか,という指摘が出ました。

 理科の知識は,技術や工学を意識し,実社会の問題と関連付けることで,獲得した知識の意味付けが深まります。実社会の問題は複雑であり,難しさを伴いますが,問題を整理し,単純化することで,小学生にも探究することは可能です。このことを踏まえて,今後も新しい学習を開発していきたいと思います。

 

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