研究活動

2021年10月28日(木)国語4年「『プラタナスの木』を読み広げよう」

 本実践は、「ある言葉を各教科の視点で捉え直し、本文との関連性を考える力をめざした」interdisciplinaryアプローチです。

 昨年度の研究発表会では、「国語科と他教科の共通する主題やテーマの関連を図った」thematicアプローチの実践を行いました。椋鳩十作品を読み、「人間と動物」というテーマで語り合う単元です。発表する際には、前の人の発表内容と自分の調べたことと、つながりを見つけて発表していくという「マイクバトンリレー」形式で行いました。その実践から、二つの課題が明らかになりました。一つは、各教科の視点を取り入れながら学習者は調べていたものの、自覚的に各教科の学びを意識することができていなかったことです。もう一つは、第1次での調べ学習と第2次での読みの関連がうまく図られなかったことです。

 そこで、本実践では、昨年度の課題を踏まえ、本単元を構想しました。

  ・ 第1次と第2次では、国語科として物語の基本的な読み方を習得する。

  ・ 第3次では、さまざまな教科の見方・考え方を働かせて物語を読むようにする。

     ①他教科の見方・考え方で「プラタナスの木」を読み、気になった言葉を調べて交流する。

     ②これまで学んできた文学作品でも同じように読み広げる。

 

 本時は、さまざまな教科の見方・考え方を働かせて「プラタナスの木」を読み広げることをねらいとして行いました。前時に、他教科の見方・考え方で「プラタナスの木」を読み、気になった言葉について調べました。本時では、それを発表して交流する時間でした。

 本時では、さまざまな教科の見方・考え方を働かせたくなるしかけとして、『教科めがね』を用意しました。『教科めがね』とは、学習者が無自覚でさまざまな教科の見方・考え方を働かせて読んでいることをメタ認知させる道具です。これらをつけることで、より自覚的に教科の見方・考え方を働かせることができるとともに、『教科めがね』をつけて語りたいという意欲を高めることを期待して作りました。『教科めがね』は、教科ごとに色を変え(総合や理科などでも教科の色を統一して認知させている)、フレームの上に教科の名前を書いためがねです。また、黒板に掲示するめがねもその色と対応させることで、どの教科の見方・考え方を働かせて読んでいるのか一目でわかるようにしました。

 学習者は、「プラタナス」という言葉から、「理科」や「算数科」の見方・考え方を働かせ、どれくらいの大きさなのかを数値で示したり、建物の階数で考えることで高さを実感的に捉えたり、ケヤキの木と比較して大きさを捉えたりしていきました。公園のシンボルとなるプラタナスの木がどういうものなのか、その木が倒れて切られるということがどういうことなのかを具体的に捉えることにつながりました。また、「台風」という言葉から、「理科」の見方・考え方を働かせ、台風で倒れるくらいの風とは、風速で示すとどれくらいなのか、濁流とはどんな流れなのかを写真で示すなどしながら、物語のなかでの「台風」と自分たちが経験している台風を重ね合わせながら実感的に捉えていきました。そうすることで、「おこったように」という表現が使われていることに改めて納得する姿も見られました。さらに、「セミ」という言葉から「理科」の見方・考え方を働かせ、セミの種類を調べたり、それぞれの鳴き声を紹介したりする姿も見られました。この物語でのセミは何かを考え、物語を読むと聞こえてくる鳴き声はこれじゃないかということを伝える姿も見られました。

 

 

 授業後の感想では、次のようなものがありました。

・みんなの調べたことを聞いて感じたことは、みんなで意見を出し合うと、自分でも想像がつかないことも知ることができるということです。

・みんなで見方を変えて調べてみると、いろいろな意見があって、たまには国語以外の見方をしてみるのも面白いと思った。次はもっとちがう見方で調べてみたいと思う。

・さっきのセミの鳴き声で、○○さんはジージーと受け取ったのですが、○○くんはひぐらしのセミを受け取ったので、感じ取り方が違うと、どんな話かも変わるのだと気づきました。

 他教科の見方・考え方を踏まえることで、この物語をどのように捉え直すことができるのかについて考える時間をもてると、読みを再構築することができたと思います。どのように深めるのか、練り上げていくポイントを学習者の発言からうまく取り入れることが授業者に求められる力だと感じました。

 

 授業討議会では、主に次の3点について意見が出されました。

・『教科めがね』について

 『教科めがね』は、自覚的に他教科の見方・考え方を働かせるものとして、効果があった。『教科めがね』は、あくまでも手段であり目的ではないということを踏まえ、他教科の授業でも活用していくことができる汎用的な道具である。

・学習課題について

 「概念」を形成するものとして学習課題を設定するのではなく、複数の教科につながる「命題」となる学習課題を設定することが重要である。どのような学習課題を設定するかが、「豊かな読み手」を育むことにつながる。

・各教科の指導事項について

 他教科の学びを活かすためにも、授業者が他教科の学びの広がりを意識しておくことが大切である。そうすることで、話合いに拡散と練上げがおこり、国語科としての学びに深まりを増す。

 

 

 今年度の研究発表会では、国語科は、1年「ずうっと、ずっと、大すきだよ」、2年「スーホの白い馬」を行います。どちらもinterdisciplinaryアプローチの実践です。単元のねらいや実践の様子、指導のポイントを10~20分程度の動画にまとめております。ぜひ、ご覧ください。そして、忌憚のないご意見をどうぞよろしくお願いします。

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